「
その子は、仮死状態で生まれてきたの
首に臍の緒が巻きついてしまって窒息したような状態で
だけど、助かって幸いなことに、後遺症も残らなかった
他の子供たちと変わらない体格と知能で成長して、親も安心していた
でも、一つだけ、少しぞっとする話があるの
その子は普通に言葉を覚えて、マンマ、ママ、パパ、ワンワン、普通に覚えていって。
歳を重ねるごとにもっとちゃんと文章が話せるようになっていて。
ある夜、普段のように寝かしつけるときに、その子が『おやすみなさいママ』と言ったあと、続けて、
『ママ、○○(その子が自分を呼ぶときの呼び名)もう帰りたい』って。
その子のお母さんが不思議に思って、
『ここは○○ちゃんのお家でお部屋よ。どこに帰るの?』
と聞いたら、
『○○、ずっと眠かったの。眠ってたかったのに、イヤって言ったのに。赤ちゃんにされたの。○○、もう疲れたの』
ちょうどその頃、テレビではオーラの泉という、前世について江原裕之というスピリチュアルカウンセラーと、霊感があると噂の美輪明宏さんがやってる番組があったおかげで、そのお母さんは「もしかして、この子は生まれる前のことを話してる?」と気付けたの。
だから、そのお母さんは、その子に生まれる前の世界のことを聞こうとしたの。
『○○ちゃんは、ここ(今世の家)に来る前はどんなところにいたの?』
そうしたら、その答えにお母さんは背筋がゾクッとしたって。その子の話は、たどたどしかったけど総合すると、
『前世でとてもとても痛い、怖い、苦しい、悲しい死に方をした。それは、自分がかつてやったことをやり返されたから、おあいこ(因果応報?)だった。
それで、あまりにもこの世はつらい場所だから、悪い子だけが落とされる場所だと思っていた。○○の魂は、この世に未練はなく、返すべきカルマもないと思っていた。
あの世に行ったとき、魂があまりにも地上で悲惨な目に遭ってズタズタに傷ついている場合、本当は長い長い間、眠らせてくれる。
眠り続ける魂はたくさんある。
その中には、傷ついて修復のために眠りを望んでいる魂もあれば、地上であまりにも悪行を働いたために、強制的に眠らされている魂もある。
そして、次の転生が決まったものの、さの内容が過酷なもののため、耐え得るだけの強い魂になるために、前の生での消耗からすっかり回復するまで眠って準備をする魂もいる。
○○は前世で悲惨な死に方をして、魂が疲れ果てていた。だから、本当はもう2度と生まれてこないつもりだった。
けれど、転生することが決まってしまった。そして、その新たな生もまた、過酷な人生だと知った。
『だから、○○、もっと眠ってたかったのに。疲れたの。疲れたよ』